穴凹書房

卒業メランコリィ

梅香も漂い終わる頃。 ――――卒業季節(シーズン)か。 たまたま実家に帰ってきた俺は、近くの学校のにぎやかな声に耳を傾けた。 懐かしい二階部屋。一人っ子だからこの部屋を使う人間はいないと俺が持って出て行ったもの以外、そのままにされているようだ。懐かしいものでいっぱいだっ...

櫻花都<おうかのみやこ>

僕らが住んでいる都市は、かつて堅牢な建造物群があったと感じさせるのも難しい、非道くこざっぱりとした景色をもつところだ。 櫻花都<おうかのみやこ>。 ここの土地は昔、「ニッポン」と呼ばれていた國だった。今の地球同盟国<オルブユニオン>でこの名が決定されたのはずっとずうっ...

空想ジャンプ

電信柱に頬を寄せてうっとりと眼を閉じたら、犬が自分の 領域《テリトリー》だと僕に吠えて噛みつくかもしれない。 誰だって自分の 領域《テリトリー》はあるものね。 暗闇の公園のベンチに星を見ようと座ってみれば、仲睦まじい御二人が僕を邪魔そうに見るかもしれない。 いい雰囲気...

白い廃残

嗚呼……ッ。 どうしてどうして、このような偶然があるのでしょうか。 私は一年前に、とある有名喫茶で何をするでもなく長い間ぼうと座っていた席をはずし、小用を足そうとその扉を押しますと、何やら白い紙が床に散乱しているのを見つけたのです。それは四辺り一面が白い綿雲の中にいるよ...

息子に護衛

空手の黒帯保持者でもあるあいつは、クラスで強面と評され、皆に一目を置かれながらも、友達としてとてもいい奴だった。 空手をしているため、むっきむきな肉体の体格をしているというわけでもなく、日本男児としては中ぐらいだと自負している俺の身長、 162センチ(……だめ?)より10...